■未登?の雪稜を行く、白山のマニアックなバリェーション
白山
中ノ川地獄谷左岸第二岩稜(仮称)
■2003/5/3-5 浅野/高橋・竹中 竹中(記)
5月2日、小牧の浅野家集合10時半、北陸自動車道〜R157から市ノ瀬についた時には
午前3時をとうに廻っていた。信頼できるメンバー同士、思いきり山行をエンジョイ、と思
いきや、半年近い冬山シーズンをよく活動した3人、今やフィナーレを迎えかなりお疲れ
気味である。高橋さんはめまいがする、とか言っているし、浅野君も「太腿が筋断裂」と
かなんとかブツブツ、私に至っては風邪でゴホゴホ咳きが止まらず、「SARSじゃねえの
?」と笑えない冗談をささやかれる始末。
翌朝、ゆっくりめにおきて、車を走らせたら、別当出合まで入れてしまった。駐車場は
ほぼ満車状態。冬合宿時の人っ子一人いない白山のイメージが嘘の様だ。高橋さんシュラ
フ一時行方不明事件(ちょっと駐車の隙に、坂道をコロコロ...。)などもあり、9時
近くに発。今日は七倉山での一般ルートだ。のんびり行けばよい。
と思っていたら、いきなりルートを間違えた。砂防新道を行く筈が、別当谷の右岸に出
てしまった。先頭を歩いていた高橋さんは、何と市ノ瀬経由白山に入るのは生まれて初め
てだと言うことが、ここで判明。あの高橋さんが、ですよ! 後ろの二人は高橋さんにつ
いて行けばよいと油断しており、高橋さんは、後ろが何も言わないので、これでよいと思
っていたらしい。まあいいや、と対岸にアリの様に列を成す登山者を横目に、我々はその
ままテキトーに進んで、やがて観光新道に合流した。
殿が池避難小屋(なかなかいい感じの小屋)を過ぎて、ルートは傾斜を増す。辺りでうぐい
すがのどかに鳴いている。ピーカンの空の下、暑さと重荷(3日分の装備+登攀具)で、それ
でなくてもお疲れ気味の平均年齢40越えトリオは、もうバテバテである。キャベツ丸ごと
2個持った食当の高橋さんが遅れ気味になる。
本峰を見渡せる弥陀ヶ原にたどりついた時には、午後2時近かった。広大な雪原に山スキ
ーのシュプールが気持ちよさげに交錯している。人でにぎやかな室堂を経て4時山頂着。快
晴の別山を見る。油坂を見る。冬合宿の撤退の記憶が蘇える。「油坂ルートを取ったのは失
敗だった」、まだちょっと引きずっている。
大汝峰を廻りこみ、その山麓、七倉山とのコルの手前2540m付近で5時20分、幕営
とする。夕食は高橋シェフの中華。キャベツをふんだんに(笑)使っておいしく頂く。学生時
代、中華料理屋でバイトしていたというだけの事はある。高橋さんの中華コック姿というの
は、容易に想像がつく。妙にはまっている気がして、なんだかおかしい(高橋さん、ゴメンナ
サイ!)。水を作るのに手間取り、10時過ぎ就寝。
5月4日朝、4時起床、6時前BC出発。七倉山と大汝峰の間のコルから、北側に開けた雪
面を下降開始6時25分。山スキーに絶好の斜面だが、さすがにシュプールの跡は全くない。
誰もいない。緩やかな傾斜の何もない雪原で、僅か100m程の間にアイゼンを引っ掛けて
2度もハデに転んだ。こんなことは初めてだ。気が緩んでいたのか? いや、逆に緊張して
いたのかもしれない。
当初登攀を計画していた東寄り(向かって右側)の支尾根は、最下部を除いて、雪原がちょっ
と盛り上がっている程度の代物で、とても登攀の対象にはならない。西寄りの尾根が地獄谷
から、比較的上の方まで尾根らしくそそり立っており、コイツ(中ノ川地獄谷左岸第2岩稜
と仮称)に取りつくことにした。2.5万分の1地図で、火の御子峰の地獄谷を挟んだ西側
対岸、西北西に2114mピークを経て、七倉山の北2415mピークに突き上げる尾根だ。
下部は部分的に岩稜が露出し、ルート取りがポイントになりそう。3月に浅野君達が火の御
子を登った時は、全て雪に覆われた真っ白な美しい尾根だったらしい。
地獄谷まで下り、7時15分1765m付近から取りつく。対岸には、火の御子峰の切り
立った、荒れた山肌がそそり立ち、ナイフリッジが連なっており、なかなか凄い景色のとこ
ろだ。登攀は、終始火の御子を対岸に見ながらになる。地獄谷とはこれからも付き合いが続
きそうな予感。
雪の斜面をしばらく直登した後、岩峰の露出した尾根の下部の雪面を100mほどトラバース
気味に進み、スカイライン近くまで雪面の残る地点で、ロープを出して登攀開始(高橋さんリ
ード)。ボロボログズグズの岩稜の間に残る雪を捉えて直上する。ここしかない、というルー
トファイング。2ピッチ目も高橋さんリード、一部ボロボロの岩のルンゼを通過する際、細か
い落石が頻繁に起こるが、ビレイ側もそれを予期して岩陰にいるので、問題は無い。
こういうわけのわからん(笑)、ややこしい登攀でのルート取りやビレイポイントの位置取りは、
ACC幹部陣はとても上手い。クライミングジム通いで登攀力自体をつけるだけで、思い上がっ
てはイケナイ。経験や知識、判断力に支えられた「総合力」が大事なのだ。彼らの登攀を見な
がらそんなことを考えていた。3ピッチ目浅野君リード。傾斜が急になり、高度感が増す。雪
が途切れ、ボロボロの岩を越えると、尾根上に出た。2060m付近、12時前。
ここからナイフリッジの尾根上を歩き、2114mピークと思われる小岩峰を右から巻くと、
リッジは平らになり、登攀要素は無くなった。ホッと一息で大休止。面白い登攀だった。また
一つ(再登の無い)初登記録を増やしたか?(笑) この先は、雪面をひたすら歩く。再度徐々
に傾斜が増し、最後は雪壁状を抜けて、2415mピークに出た。前日お疲れ気味だった高橋
さんは、この日ここまで、大半トップを切るパワーを見せた。この辺がこのおっさんの凄いと
ころか(再度、ゴメンナサイ)。
このあと七倉山までが結構長く、緊張の無くなったお疲れトリオは、もうへろへろである。15
時半やっと七倉山山頂着。そこからさらに1時間かかってBC帰着。
5月5日、4時起床、6時5分発。本峰には行かず、一直線に弥陀ヶ原へ。帰りは早い早い.
9時半前には別当出合に着いた。
コースタイム
5/3 5/3 8:55別当出合
12:30殿ヶ池避難小屋 13:55弥陀ヶ原2315m 14:
50室堂16:00本峰山頂 17:20BC大汝峰北2540m付近
5/4 5:55発 6:25七倉山−大汝峰間のコルから下降 7:15 1765m第2岩稜
取り付き 8:50 1975m(登攀開始) 11:40尾根上に出る2060m 14:10
2415mピーク 15:35七倉山山頂 16:35 BC
5/5 6:05発 7:00弥陀ヶ原砂防新道分岐 9:25別当出合
@5/3 市ノ瀬から観光新道に入る。快晴の天気。
A観光新道は急な傾斜のアプローチも出てくる
B白山本峰から見る室堂。別山は真っ白だ。
C大汝峰に向う。山スキーのトレースも残っている。誰もいない。
D大汝峰を前方に見る。広い雪原が続く。
D5/4、晴れ。今日も日差しは強くなりそうだ。七倉山手前コルのベースで。
D正面に地獄尾根を見ながら地獄谷に向けて下降。
E登攀予定の第二岩稜のラインを見る。
F中ノ川地獄谷に降り立つ。
G第二岩稜1ピッチ目の雪壁をフリーで直上する。
G第二岩稜の2ピッチ目の登攀。急な雪壁にバイルを利かせる。
H3ピッチ目。ナイフエッジからボロボロの壁へ。高度感を感じる登攀。
I尾根に出るとすばらしいナイフエッジの雪稜となる。後方は地獄尾根。
J最後は急な雪壁から稜線に出る。
K10時間の登攀は終わった。ベースに戻る足取りは軽かった。