「Bルートの北西T稜は、本当は僕が最も行きたかったルートです。Cルートの下降が難しそうなので、僕はCルートに回ることにしました。初日に北西T稜の下部緩傾斜帯まで進んでおきたい。安易な敗退はせずに『不退転の決意』で挑んでほしい。」集中前に各パーティーリーダーへの追加連絡でこのような文書を載せたところ、Bパーティーの浅野さんから「林君が行った方がいいんじゃないの」という電話があり、有り難くこのお言葉を頂戴する。別に作戦というわけではないのだが…。「野伏ヶ岳北西第T稜」改め「野伏ヶ岳西面中央稜」を目指していざ出発。
22日(雪) 中居神社の駐車場に前泊した他パーティーより一足早く出発。小雪が降る中、林道からスノーシューを履いて快調に飛ばす。中村君が飛ばすので、こっちも付いていこうとするが、付いて行けないのが情けない。岐阜から来たという単独スキーヤーを途中で追い越し、和田山牧場跡の東端に飛び出す。何とここまで1ピッチで来てしまった。ここで休んでいると、先ほどのスキーヤーがやってきて、ダイレクト尾根への効率的なアプローチを指南してくれる。ダイレクト尾根に乗ると部分的に堅雪となり、北東尾根とのジャンクションでスノーシューとストック1本をデポ。野伏ヶ岳の頂を踏んだのが出発して4時間という早さだった。風雪の中、コンパスを振りながら北上し、北峰左稜を下降する。中間部の緩傾斜帯を経て末端部へ。
凍った滝を見ながら雪に埋まった谷を横断し、目的の中央稜末端に乗る。このあたりは地形図から想像していたよりも急峻な雪稜になっており、ちょっと驚く。部分的にザイルを出した方がよいかなと思われるような個所もあったが、ワンポイントなのでそのまま通過してしまう。ほとんど中村君トップで標高1240mの緩傾斜帯へ。この先は傾斜が増すので、かなり早いがここで行動を打ち切る。もとより雪洞を前提としていたため、アライの自立式ツェルトしか持って来ていない。というわけで、快適な幕営のための雪洞掘りを開始する。堅雪に苦労しながら、中村君の奮闘もあり1時間少々で完成。入口の屋根にはグリベルのマークのように2本のアックスを埋め込み、何とも勇ましい門構えだ。中でくつろいでいると、Bパーティーがやってきて隣りに幕営する。6時の交信では、雪洞内の我々の声が他パーティーに届いておらず、しばしお騒がせしてしまう。ともあれ、どのパーティーも順調のようで、翌日の集中時間を1時間早めて10時とした。前夜は睡眠不足なので、この日はたっぷり寝ることができる。
23日(晴→雪) 4時起きでBパーティーと共に6時過ぎに出発。Bパーティーはすぐに右稜へトラバースしていく。中央稜は、やや傾斜が強いところもあるが、高度感がないせいかロープが必要と感じない。上部で藪壁にスカ雪が載った個所もあるが、これも難なくクリアできる。背後を振り返ると、青空の下、雲海の向こうに島のように浮かぶ独立峰が見える。荒島岳だ。なんとも立派な山容だ。やがて傾斜が緩み、頂稜へ。稜線を北上していく仲間達が見え、コールが聞こえる。そして今山行2度目の山頂へ。Dパーティーの猛さんだけが山頂に残っていて、残りの面々がアイゼン歩行を兼ねて稜線を歩いているとのことだ。10時までは1時間半もあり、じっとしていても仕方ないので、馬鹿の一つ覚えで雪洞を掘ることにする。他パーティーの面々の協力を得て掘り続けるが、2月とは思えない堅雪に苦労する。スノーソーでもないと掘れないな…というわけで一部屋根付きの塹壕みたいなものが出来上がった。最後にBパーティーが到着し、記念撮影、乾杯と集中お馴染みの光景が続く。さて、そろそろ下らないと渋滞に捕まってしまうぞ。
[コースタイム]
2/22白山中居神社(6:40)和田山牧場跡(8:05〜20)野伏ヶ岳山頂(10:40)1500m付近北峰左稜下降点(11:00〜20)西面中央稜1240m付近(12:40)雪洞内幕営完了(14:00)
2/23幕場(6:20)野伏ヶ岳山頂(8:30〜10:30)白山中居神社(12:45)