■再登されることのない初登、野伏ヶ岳のバリェーションルート。
白山
野伏ヶ岳西面北峰西稜下降
〜北西第二稜
■2003/2/22-23 浅野/高橋
【冬の集中Bパーティ報告】
野伏ヶ岳ダイレクト尾根〜北峰西面右稜(下降)〜主峰西面右稜〜野伏ヶ岳
L.浅野 高橋 〔記/浅野〕
冬の集中案が出されたのは総会の日。回覧された用紙を見て、バリエーション・ルートらしきものが
ルート一覧にあったので、それを希望する。地形図が添付されていたのに目を通さなかった。
後日、集中山行の最終打ち合わせまでルートの詳細を検討せずに、例会の日に林正くんに電話で問い合
わせる。直前まで担当者に全てを任せ切りにしてしまったことをその時に恥ずかしく思い、全く申し訳
ない限り。地形図を見ながら下降の尾根なども教えてもらい、ようやく計画の概要を掴む。その前日に
林正くんから、各ルートの詳細メ‐ルが届いており、当初に割り当てられた主峰西面中央稜(計画段階
では「T稜」)には「林正くんが一番行きたかったルートであり」「不退転の決意で臨んでほしい」と
のコメントがあった。これは生半可な気持ちでは行けないぞ、と気を引き締めたが、林正くんの係とし
ての想いを考えると彼に主峰西面中央稜に行ってもらったほうがよいと感じた。これは、苦労多くして
準備する係のかたが一番行きたいルートに行くべきとの私の持論からでもある。
かくして私のパーティは、主峰西面右稜(計画段階では「U稜」)となるが提示された下降ルートはな
るほど懸垂下降もあり、の地形。これは困ったが、下降ルートおよび代替ルーとについては翌日までの
宿題となる。次の日、夕方早々に林正くんから電話があり、同じルートを下降しましょうとのありがた
い提案。出発前日になって、ようやく我がパーティのルートが決まった。
2/22(土)
初日は、林正+中村の最強二人組みと同一行動。一足先に、彼らは飄々と出かけて行った。ラッセルが
あるから追いつくかなと甘い考えで40分遅れて出発するが、林道は踏み固められてラッセルはなし。
彼らに追い着くことは叶わないとすぐに悟るとともに、岡庭パーティにもすぐに追いつかれ、自分たち
の非力を知る。
8年前に来て以来だったが、林道終点からの大平原には新鮮な感動があった。林正パーティのトレース
のおかげで迷わずにダイレクト尾根に至る。地図で見ただけだと、大平原から左手の丘を越えるのかと
思ってしまう。
ダイレクト尾根は、異様なクラスト状態。北東尾根との合流点までワカンで我慢するが、ここからアイ
ゼンに履き替える。山頂から主峰西面右稜や下降の尾根などを覗き込む。イメージを描けたつもりで下
降に入る。林正パーティのトレースを追うが、同じ尾根を下っても芸がないなあと不埒なことを考え、
「勝手に」下降ルートを代える。提案された一つ手前の尾根(北峰西面右稜)は、上部にがけ(土)マ
ークがあり面白そうだ。電話での打ち合わせで話題にもしているから変更してもいいだろうと足を踏み
入れる。万一の場合(事故等)の目印に赤布を付けていく。
疎らな低木があるが、雪は尖った三角雪稜で痩せ尾根ぶりが伺える。ダイレクト尾根(つまりは東面一
体?)とは違い、深雪となり、腿まで埋まる。左側は雪庇の踏み抜き、右側は雪崩と滑落に注意し、慎
重に進む。いくらも進まないうちに先が無くなる。前も右も左も急傾斜で切れ落ちている。落差は10
m。右か正面か迷うが、正面から下る。か細い潅木が50センチから1m間隔でかろうじて生えており、
それを頼りに下る。途中、窪は氷と化しており、緊張させられた。登りならザイルを出すかもしれない。
ここからは樹林の下りだが吹雪きの中、先が読めない。雪は深いが、下りなのでアイゼンのまま下る。
細かい尾根がたくさんあり時に軌道修正しながら注意して下るが、結果的に尾根を外し、左に下りてし
まったようだ。下降途中に早めに沢を横断したほうが効率がよいと考えていたからだろうか。こういう
ミスは、場面が違えば致命的とも言える。
冬の沢は予想以上に深く側壁は急峻で、この時期は到底降りられないし、登り返せない。風雪の中、側
壁の雪面にぽつんと立った根曲がりの孤高の木、人間の目に触れることはまずないだろうこの木が、山
の姿の裏世界を語っているように見えた。
尾根の末端かと信じて降り立った地点は、右手にあるはずの沢がなく傾斜の緩いデブリにぶつかった。
横断中、深雪にもがいている暇はないと思い、アイゼンの上からワカンを履く。1m大のデブリを乗り
越えて対岸に取り付く。こういうデブリは、雪庇の崩落ではなく、沢筋の雪が雪だるまのように丸め固
められて形成されるのだと感じる。対岸の斜面も雪崩を恐れて、慎重にルートを選ぶ。ワカン+アイゼ
ンが効果的だった。対岸上の細い尾根には、Cパーティのトレースがばっちり。小さな感動があった。も
のの数分で、Cパーティの雪洞を発見。我々は雪洞を掘る気はなく、ゴア天を設営。夜は雨となり、高橋
さんが雪洞にすればよかったと何度も呟いていたが、我がゴアエス・ソロは一粒の雨をも通さず、快適
に過ごす。高橋さんと2人だけの山も久し振りだ。集中時刻が早まったが、遅くまで飲み、話す。
2/23(日)
集中時刻が早まり、焦る。係の林正くんはそんなに慌てなくても大丈夫と言ってくれるが、尾根の取り
付きも未確定の我々は実は困っていた。ザイルを一回使ったらアウト。去年の二の舞いは避けたい。
現在いる地点が主峰西面右稜の末端と同標高。今いる主峰西面中央稜の側面をトラバースし、沢を横断し
て主峰西面右稜の末端に取り付くことになるのだが、自信を持って主峰西面右稜を同定できない。消去法
により断定をし、末端を目指す。時は2月、主峰西面中央稜の側面は幾つも窪状の形作っており、表層10
〜15センチの新雪が雪崩れた跡を渡るはめになる。亀裂も見え隠れし、厄介この上ない。渡る沢はデブリ
が堆積して主峰西面右稜末端の取りつきも潅木がほとんどない雪崩斜面。上方から見ていると、ガスの中、
不気味でしかない。一番怖いのは、末端取り付き斜面の雪崩。止めたいと思うが、真下まで行ってみない
で結論は出せない。
降りて見てみれば、傾斜が緩く何とかなりそうだ。よくあることだが、実際見るまではどうしても安心で
きないのは、性分だろうか。末端斜面を登り切れば、尾根が間違っていようが行くだけ。急傾斜の尾根は
50m〜100m毎に小角度で折れ曲がって高度を上げていく。尾根は斜面と同化し、また尾根を形作る。
斜面には横一線の亀裂が走り、ピンポイントで越えて行く。次の斜面は潅木も疎らで雪も浅い。草付きの
ような斜面にアックスを打ち込み乗ッ越す。高橋さんはアイゼンに履き替える。右に雪庇が崩れた雪稜の
上には、岩場が立ちはだかるが、左から巻いて行ける。短くも美しい三角雪稜を渡り、最後はダケカンバ
の疎林の中、急傾斜を登り切り国境稜線のトレースに合流した。ザイルを使うことはなかった。微地形、
微細地形を雪が見事に表現していた、そう感じた登行だった。わずかに歩けば、山頂。間違いなく主峰西
面右稜を登ったようだ。皆が集まる談笑の輪に入り、集中の成功を祝った。[浅野 記]
【コース・タイム】
2/22 白山中居神社7:10――9:00大雪原――10:00ダイレクト尾根――12:15〜40
野伏ヶ岳山頂――14:00沢床――14:20T稜――14:30 1230m平坦地(幕営)
2/23 6:20幕営地出発――7:30U稜末端――国境稜線9:35――9:40山頂(集中)