■初めての台湾溯渓、日本人初溯渓の三光渓下流部を狙ったが…

台湾
大漢渓三光渓


■2003/10/9-13[溯行10/10-11] 
■高橋/浅野・盛小根・中井・伊藤(名古屋ACC)
  石田・古田(中央アルパインクラブ)
  荘再傳・呉牡丹・張麗雲・卓淑静(中華民国溯渓協会・台北溯渓倶楽部)     

6月の海外遡行同人の総会で、中央アルパインの方から10月台湾遡渓の話を伺う。
その場で、私と高橋さんは飛び付いた。中央アルパインにおんぶに抱っこの山行で
申し訳ないと思いながらも、年末年始の台湾合宿に向けて良い足がかりができる。
名古屋ACCでも参加者を募ると、6人が手を上げた(残念ながら、体調不良のため定
藤さんが直前で不参加)。

中央アルパイン側のお二人、隊長の石田さんとあらゆる御膳立てをしていただいた
古田さんに感謝したい。勿論、茂木完治さんを始めとする海外遡行同人の方々にも、
である。
 

 早朝の名古屋空港で7人が揃い、台湾への旅が始まる。飛行機は無事に台湾に着陸
し、台北空港にて、荘再傳氏一行と合流する。マイクロバスにまずビックリ。昼食の
酒宴の後、卓さんのマンションに不要な荷物を預け、近くのスーパーで買出し。入山
までの道すがら、マイクロバスのエンジントラブル?では、台湾女性の奮闘に感動す
る。山道を走るうちに辺りはすっかり暗闇になっていた。本日中に入渓予定地の川原
に下りてキャンプの予定だったが、そこより数キロ手前の国道のトイレ付き駐車場に
て幕営となる。晴天の夜、宴会の後、テントで眠る。台湾の4人は、タープだった。
 

 快晴の朝。マイクロバスは昨夜のうちに街に帰ってしまった。ここから入渓予定地
までただの河原を3時間歩くことになると聞いていたが、荘さんが急遽トラックをチ
ャーターし、荷台の人となる。要らない荷物も預かってくれた。 国道から、はっき
りとした道を下り沢に下りる。そこには川原は一切なく、30m以上の川幅いっぱい
に水が流れていた。歩き始めて、すぐに渡渉。腿くらいの深さで、スクラムを組む。
私は先頭から2,3人目にいたが、後続全員がスクラムを組み、横一線のラインダン
ス。まるで川を堰き止める形となり、危険と思うも不謹慎ながら笑ってしまった。う
ち一人が転んで流されそうになりながら、繋がったまま、渡り切る。なんとも、可笑
しな滑り出しである。

 何歩も進まないのに、川幅いっぱいの流れが深い渕のようになり、右岸に渡る。女
性のために、念の為のザイルを出す。右岸に渡ったが、先に進めず同じ所をザイル渡
渉。渕の先、右の瀞場から上がるルンゼがルートになるようだ。荘さんが「チムニー、
チムニー」と教えてくれた。ここは、中井さんにザイルを託そうと目論んでいたのだ
が、渡渉ルートや手順の関係で、私がトップを行くことになってしまった。聞けば、
この三光渓は、台湾遡渓におけるリーダー認定試験の場となっているとのこと。「日本
代表」としてこの試験に挑むことになり?、いささか緊張する。

 ザイルを着けて5m強の泳ぎ。ザイルがグイグイ引かれると思って振り返れば、荘さ
んが私の2m後方でザイルにつかまって泳いでいた。ルンゼはほぼ正対で登れ、5m上
の大岩の岩棚に上がる。日本代表として役目を果たし一安心する。牡丹さんらが、ザイ
ルを水流側の上流に回せと指示をくれる(何と言われたかは、覚えていない。なぜ、意
味が通じたかも不明)。後続を流れに抗して引っ張り、水流と同じ高さの岸に上げた。
這いあがる所には足掛りがなく、ヒールフック気味に乗り越しが必要。水流に没しなが
ら引かれて来たり、ザックから体が離れひっくり返ったりと、ここも十人十色で微笑ま
しい。

 総勢11人を待ちきれず、荘さんが先に進む。が5m先、岩と岩の間の幅が広く、流
れが急なため、空荷でそこを飛び越える。ジャンプにザイルを着けたりして、手間がか
かる。順次、先に進むが、ジャンプの際に足首を捻ったらしい伊藤さんが、急流でよろ
けて  さんにすがっている。それだけでは体制を直せず、次の人が支える。それがあ
だになり、3人が倒れそうになり、流されそうになる。もう一人が助っ人になり、よう
やく事無きを得たが、結構やばい状況だったらしい。

 手間が掛かるが、「さすが台湾、スケールが違う」と思っていたら、「水量が2倍」と
荘さんからのコメント。昨日まで、ずっと雨だったらしい。

 すぐに、大きな渕が現れ、水線どおしに進めなくなる。左からも巻けそうだったが、取
り付きのつるつる斜面を嫌い、右の低い段丘に上がる。渕の中ほどに5mほどの滝を掛け
て出合う支流を横断し、再び斜面を上がる。壁に行き詰まり、10mの懸垂下降と6mの
懸垂下降を連続して行ない、沢床に下りる。懸垂下降中に足を掛けた岩が板状に剥がれて、
この付近の岩の節理を感じる。

 少し歩くと、またもや激流に行く手を阻まれる。岩の間を水が泡立ちかえって渡渉はま
まならない。ここは、ザイルを付け、右岸を側壁に沿って激流に抗して進む。へつりを交
えながら、胸まで浸かっての突破である。ザイルをフィックスし、後続が続く。へつりに
失敗して流される(2度も)メンバーもいたが、ザイルのおかげで命拾い。やれやれ。

 次は、波も立たない深い急流が川幅いっぱいに横たわる。荘さん、石田さんで「作戦:
室伏」を実行。ハンマーを投げるが最高記録が川幅2/3ほどの7m。メンバーの半分が
手前で対岸に渡り、側壁を上がって高巻く。途中の壁にフィックスロープがあり、岩壁が
削られ足場が作られていた。「室伏」組は、対岸からロープをもらい、泳ぎながら渡って
来た。

 やっと休憩を取る。時刻はすでに12:20。台湾チームから昨夜の料理の鍋が、文字
通り鍋ごと出てきて、みんなに振舞われた。それぞれの行動食も全員に配りながら、台湾
式でのんびりと時間を過ごす。

 午後の部も、急流の渡渉で始まる。スクラム渡渉で全員が越えられそうもないので、こ
こもザイルを使用する。石田さんを上流に配置し、隊長を支点にして振り子の要領で、ザ
イルを頼りにしながら流れを渡る。中ほどの岩に上がってピッチを切り、後続を渡しなが
ら残り半分の渡渉もザイルを固定する。その上流も磨かれた側壁の中に激流が続き、右の
段丘状を伝って先へ進む。側壁の板状節理が剥がれて、岩の板が大量に散らばっていた。
70mほど進んだ所で沢床に下り、ゆったりと流れる地点を荘さんトップで25mの渡渉。
対岸の岩場に乗るのが難儀なためだろう、荘さんが流れの中でザックを降ろす。水面に置
いたザックは、ゆら〜と動いたかと思ったら、流され出した。止められない、と判断した
荘さんは潔く諦めた。ザックが岩の間をすり抜け、激流の中を下流に流れて行った。私と
高橋さん、中井さんで追いかける。岩をへつって断丘状を走る。100m以上戻っただろ
う。先ほどのザイル渡渉の現場まで来ていた。ここでなければ諦めよう、と目を凝らすと
岩に引っ掛かっているザックを発見した。中井さんにザイルを取って来てもらい、ザイル
渡渉でザックを回収した。まさか、見つかるとは思わなかった。

 ザックを担いでみんなの所に戻ると、荘さん以外はすでに先へ進んでいた。対岸にいる
荘さんの所に高橋さん、中井さんが行く。私と一つのザックが残され、そのザックをザイ
ルで渡そうとするが、下流に流されそうになり、高橋さんに取りに来てもらう。流れに入
る高橋さん、浸かっては戻りを2度。3度目に流れに身を置いた時、ゆっくりと流され始め、
落ち込みに入ってしまった。ザイルが引かれ、私も流れに引き込まれる。お互いにヤバイ
と焦ったが、どちらもすぐ下流で止まった。方針変更。残ったザックは、私が少し上流側
に移動することにより、ザイルで渡すことができた。

 私が渡渉してようやく合流。高巻きに入り、先行組を追いかける。川床から20〜30
mの高さをトラバースして行く。やや疎らな樹木は、台高や大峰の高巻きを思い起こす。
2〜3分行くと、ザックが置いてあり下降点を教えてくれる。急斜面だが、細い木々を拾
えば、下りられそうだ。10m下に3〜4人。その下で、シュリンゲフィックスと懸垂下
降を交えて沢床に下りているらしい。荘さんがその斜面を下りるようと一段下がった太め
の木の根元に立った時、足元すぐ下から70p×70p×30pの岩がゆっくりと剥がれ、そし
て落ちて行った。「・・・」(ヤバイ)「ラク、ラク、ラク・・・・」我々は、死に物狂
いで叫んだ。音を立てて転がり落ちる岩。沢床に落ちた岩が砕け、爆発のような音を聞いた。

 下の様子は分からない。下からの声もない。大声で問いかけると、全員無事なことが分か
った。ほっとして力が抜けた。後で聞けば、斜面を下降中だった張さんの頭上を、空を切っ
て岩は飛んでいったそうで、下にいた石田さんや盛小根さんは走って逃げて難を逃れたそう
だ。卓さんには、粉々に砕けたかけらが当たったとのこと。何もなかったのは、奇跡だ。

 全員が沢に下り、無事を喜び合う。 時、既に16:00。

先を急ぎたいが、またも右岸のへつりはザイル・フィックス。そして、続いてザイル渡渉。
左岸の岩壁が高くそびえ、右岸に進路を求めると沢どおしに行けず、小さく高巻き懸垂下降
10m。相変わらず、進まない。区切りの大きな左岸支流はまだか、と不安になった頃、立
派な川原が現れ行動終了とする。

 長い長い1日がようやく終った。後で分かったが、遡渓距離は、1.4キロ。所要時間は、
8時間半。荘さんが、「半日で来れる所なのに、おかしい」と何度も首をひねっていたが、
納得の遡渓距離である。心中、穏やかではなかっただろう。

 快晴の夜、焚き火と料理と酒で日台友好を深める。美しく素早い動きの蛍の舞いと、ある
メンバーの胃袋を源とする滝・・・。台湾の夜は更けていった。 

 快晴の空の下、7:45出発。今日はどんな遡渓になるやら。
すぐに腰までの渡渉をし進んで行くと、左岸からの大きな支流はすぐだった。現在地が確定し
た。

沢が左に折れる所で、今日も激流に行く手を阻まれる。ここもいつもは水流を躊躇なく進め
るのだそうだ。左から巻き始めると、はっきりとした道に出会う。尾根状に乗り、少し下がっ
て懸垂下降のセットをする。ザイル2本をつなぎ、さあ下りようとした時に、荘さんから「懸
垂、危険」「アップ、アップ。(ここでは、上に行くの意)」の声。合点がいかないが、大高
巻きをするのだろうと解釈し、ザイルを片付け、道を上がる。道は急な尾根。上流側も急斜面。
どこをトラバースするのかと思っていたら、荘さんからこの道を使って国道に上がることを知
らされる。この水量では遡渓そのものも危険だし、このペースで行ったら予定していた四稜温
泉まで到底辿り着けないための選択だ。

 一同皆、肩を落とすが、しかたがない。途中のエスケープの確証がないことやメンバーのこと
を考えてのリーダーの英断に異論はない。重い足取りで登ること40分、国道に出た。

ここから国道を移動し、四稜温泉から登山道を下り、残り時間を使って沢を下降し登り返すこ
とも案として出たが、中途半端なことは止めにしようとの意見が大半を占めた。ここで台湾遡渓
を終了、遡渓距離1.5キロ、1日と1時間半の遡渓が終った。
 

 その後は、長(おさ)のトラックでの移動、お昼の打ち上げ、夜の打ち上げ、台北スクーター
の夜、夜行列車での天然温泉とタロコ渓谷の旅、最後の夜の乾杯大宴会、故宮博物院、日式ラー
メン、書店、山道具店、台湾茶(中華茶藝)など、台湾の方に同行していただいての盛りだくさ
んの内容を消化した。

 おみやげもたくさんいただき、空港へ移動。送迎、お見送りも4人全員でしてもらった。何度
も手を振り、4人と別れを惜しむ。「また、来よう」との思いを強くし帰国の途に着いた。


◆10/9 「いざ、台湾へ!」

taiwan1.jpg (30322 バイト) @台北蒋介石国際空港到着。お迎えの荘先生たちを待つ。

taiwan2.jpg (28998 バイト) A早速、昼食の卓を囲む。左端、台湾溯渓の重鎮・荘先生。

taiwan3.jpg (21077 バイト) B三光渓入渓点での前夜祭。

◆10/10 「いざ、三光渓へ!」

taiwan5.jpg (28129 バイト) C溯渓準備を整える。

taiwan6.jpg (22709 バイト) Dまだ薄暗く日が差さない渓に降り立つ。水は轟々と流れていた。

taiwan7.jpg (25556 バイト) E泳ぎに備えてライフジャケットをつける伊藤。

taiwan8.jpg (27687 バイト) F泳いでクラックが走る岩場に取り付く。手前は呉牡丹。

taiwan9.jpg (26378 バイト) G淵をザックピストンで泳ぐ。流れは速い。

taiwan10.jpg (25893 バイト) H流れが緩やかなところがよくやく出てきた。台湾チーム女性陣と浅野。

taiwan11.jpg (24864 バイト) I高巻きから二度の懸垂へ。

sankokei1.jpg (27722 バイト) J激流をへつる浅野。水量が多く厳しい溯渓となってきた。

sankokei2.jpg (27401 バイト) Kロープをフィックスしてへつる。激流で体がもっていかれそうになる。

taiwan12.jpg (46161 バイト) L渡渉・へつりが続く。ここで荘先生のザックが流される。

taiwan14.jpg (45022 バイト) Mロープを使いっぱなしの渡渉が連続。側壁が高く素晴らしい。

taiwan15.jpg (13226 バイト) N水との闘いの初日は終わった。台湾で始めての焚き火を囲む

taiwan16.jpg (25319 バイト) O荘先生と。左・石田、中・盛小根。のんべいどうし話が弾む。

◆10/11 「ああ、中退!」

taiwan17.jpg (31238 バイト) Pあまりの水量の多さにこれ以上の溯渓は危険と判断し、打ち切る(国道で)

taiwan18.jpg (27327 バイト) Q巴陵の食堂で。溯渓を終えてまずはビール!僕らの溯渓が終わった…。

◆番外編@ 10/11 「うまい、うまい!」

taiwan19.jpg (27492 バイト) R台北の海鮮食堂で。荘先生を囲んでの打上げ。料理もうまいし、酒もうまい!

taiwan20.jpg (24656 バイト) S屋台が並ぶ台北の繁華街で。黄色のシャツは台湾溯渓協会のユニフォーム。

◆番外編A 10/12 「どっひゃ〜太呂閣渓谷へ!」

taiwan21.jpg (38946 バイト) 「絶景〜!生きててよかったよ〜」

◆番外編B 10/12 「打上げだ〜飲んだ、飲んだ!」

 

taiwan22.jpg (27137 バイト) 荘先生と佐藤さん(台湾在住・海外溯行同人)を囲んで。

taiwan23.jpg (25475 バイト) 台北の夜はビール38本の空瓶を残して、楽しく妖しく更けていった。

 

◆番外編C 10/13 「帰国の日・台北観光へ」

taiwan24.jpg (25068 バイト) 故宮博物院で。これを見なくちゃ、台湾に来た意味ないね。右・張さん。

taiwan25.jpg (27255 バイト) 台北のお茶専門店で…こうして僕らの台湾が終わった。また来るよ〜!


 

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