北ア/鹿島槍ヶ岳ダイレクト尾根

■02/04/13-14    ■林正/蘭  ■蘭(記)


 一ヶ月にわたる、春の後立の雪稜ツアー(3/23-24・爺ヶ岳主稜、4/6-7・杓子岳双子尾根)の鳳を飾る標題の山行。前の二本は悪天により、いずれも中退に終わりピークを踏めなかったので、トリプルジョーカー?は避けたいと天気の神様にお祈りする。「天気予報をどう考えるか?」、前夜発の12日、正さんとの待ち合わせ場所に向う途中でよった東名・上郷SAでテレビの土曜日の天気予報を見ると、長野県方面は「晴れのち曇り、降水確率0-20%」、まずまずの予報にあらためて満足。が、石川・富山方面は「晴れのち雨、降水確率-50-60%」、週間天気予報と異なりあまりよろしくない様。白山(大笠山)に入る浅野Pは大変そうだな、と他人事のようにこの時は思う。

名古屋IC近くのサガミの駐車場で、賢妻・ミチヨさんに車で送られてきた正さんと合流、通いなれた道を一路北へ。AM2:00鹿島槍ヶ岳への入り口・大谷原の林道終点には、すでに7〜8台程の車があり、鹿島槍を目指すアルピニストの聖地と化していた。

13日(土曜日)1時間半程仮眠をとり、3時半起床、4時発。ヘッデンで大冷沢沿いの登山道を進む。途中、少々道を失うこともあったが、早朝発の功で雪はよく締まっていて歩きやすく、明るくなりだした頃、西俣出合へ。これから進む北股本谷方面には早くも鹿島槍(南峰)のピーク、鎌尾根(布引尾根)、ダイレクト尾根もくっきりと見え、上々の天気に登攀意欲も膨らむ。デブリを避けながらひたすらダイレクト尾根の末端を目指すが、気温も上がりとても暑い(鎌尾根末端付近から陽光もあたり始め日影が恋しくなる)。ダイレクト尾根末端(ここでいう末端とは、ダイレクト尾根下部に入るルンゼ直下、標高約2300M付近)で、ストックをしまい、ダブルアックス、アイゼン、ヘルメットを身につける。正さん先頭でルンゼに取りつく。お約束のように下部は緩やかでも、登るにしたがい勾配は急になり、途中でルンゼを右に避ける。ロープは出すまでもないと思うものの、キックしても踵までは入らない締まった雪につま先立ちの連続でふくらはぎもピクピク。後を降りかえると、鎌尾根末端あたりに三人の人影が見える(後でわかったことだが、単独行者とブナの会の2名パーティー)。時間的に我々より約1時間遅れか。やっと、ルンゼを形成する右稜上に詰めると傾斜も緩くなり、ここからは蘭が先頭で雪稜をいく。左稜と合流するとピークに至るまでのルートがよく見渡せた。行く手を遮る岩壁、どうもあのへんが核心部だろう。岩壁手前の雪壁下のブッシュで支点をとりロープをだす。(この間、追いついてきた単独行者は先行し、ブナの会のパーティーには少々待っていただく。)

1P目:正さんリード。雪壁を直上(途中デッドマンでランニング)、右にトラバースし岩壁を避ける。回りこんだところにある、ブッシュでランニングを取り、雪の垂壁を直上。雪が良く締まっていて、ステップがきってあるので、セカンドとして登るには心強い。でもリードだと結構勇気のいるところだろうと感謝するピッチ、60Mいっぱい。核心と思われた岩壁上に這い上がる。

2P目:傾斜はまだやや強い。蘭リード。1P目終了時、正さんに先行した単独行者が右の雪を被ったハイマツ帯に入って苦労していたと聞き、これを避け、やはりキックしても踵までは入らない雪壁をふくらはぎをピクピクさせ直上(途中2箇所、スノーバーでランニング)。張り出したハイマツで支点をとる。52M。(※後続ブナの会Pは、1P目でザイルをしまい、このピッチは我々のトレースをノーザイル)

3P目:正さんリード。途中からコンテに切り替える。

コンテに切り替えてからピーク迄が思いの外遠い。先頭でザイルを引く正さんのペースも上がらないよう。そうこうすると、ブナの会Pが追いついてきたので先にいってもらうことにする。それにしても彼らの荷物は小さく軽量化を大事にしていることが伺える。気がつくと風・ガスが出てきて視界がきかない。あたりは真っ白、そんな中、シーンは若干違えども「雪庇確認紐が、白い闇を切り裂く」という言葉を思い出す。明瞭に見える雪の白以外は、先頭の正さんとを結ぶこのザイルの青のみ。天気がいいときは単なるバカ登りとはいえトレースもすぐに消されてしまうこの悪天の中だととても心強いコンテ。やっとのことでピークに立つと更にすさまじい風雪。視界は3M程度か。いそいでザックから目出帽を出す。あたりを良くみようとサングラスを外すも、あまりの風雪に目が痛くてそれもままならない。天気予報では!?と思うもこれが現実。白山は他人事では無かったと実感。鎌尾根下降を変更し、冷池避難小屋泊、翌日、赤岩尾根下降の計画に変更。先行したブナの会Pの後を追うように避難小屋を目指すも視界は乏しく、トレースもたちどころに消されてしまう。そんな中、正さんは慎重にコンパスを頼りにルートを見出すが、悲しいかな蘭は完全にデク(木人形)と化し、正さんを見失わないように後に付いていくのが精一杯だった。半真半疑で後を追うと夏道らしきものに出合う。安心したせいと睡眠不足のせいか、避難小屋までの区間、自分でもとても奇妙な状態、寝てないんだけど寝てるような状態?でひたすら小屋を目指す。標高を下げるにしたがい風は相変わらずだがガスは晴れてきて、小屋がやっと見えると一気に眠気も覚めた。

冬季小屋に入るとすでに二張りテントでなく「ツェルト」が張ってある。一張りは先ほどのブナの会P、彼らが正さんに声をかける、「三浦さん、いますよ」と、もう一張りのツェルトを指す。中からひょこっと氏が出てきて、正さん懐かしそうに言葉を交わす(ペルー等、過去に三度、山でお会いしたことがあるそう)。更に、氏から同パーティーの「チーム84」の澤田さんを紹介される。正さんも驚きの対面に興奮気味だが、春合宿の薬師岳東面の雪の情報を聞くなど余念が無い。氏らは黒部方面への山スキーとのこと。それにしても、4月とはいえ雪山にツェルトとは驚く。正さんによると、山スキーは荷重が滑降に響く為、特に軽量化が重要とのこと。小屋にわずかに残るスペースに場違い?とも感じてしまったゴアテンを張り、手早く食事、水作りをすませ就寝。とてもぐっすり寝れた。

■大谷原4:00=西俣出合5:00=ダイレクト尾根末端8:00=鹿島槍山頂13:30=冷池避難小屋(BP)15:30

14日(日曜日)4時起きだが、他の2パーティーはすでに出発準備(三浦さんPは更に山スキーへ、昨日のPは赤岩尾根下山とのこと)。遅れ馳せながら我々も朝食をすませテントから出て、昨夜とはうってかわりガランとした小屋内で準備を整え、外を伺うと風は強いものの上々の天気に「ヒャッホー!」。冷池避難小屋から赤岩尾根下降点は登り返しとなり、朝イチで風もかなり強いので結構キツイ登り。赤岩尾根、丁度3週前の爺ヶ岳主稜にいった週末にあった北アルプスでの三件の遭難のうちの一つ、ガイド滑落死亡のあった尾根。少々緊張する。途中まで稜を忠実に下るも、先行したブナの会Pのトレースが西俣沢のルンゼに下っている。我々も積雪・雪質条件を踏まえた上でそれに習う。楽チン下山。西俣出合で一本とり、一気に大谷原へ。「薬師の湯」により、留守宅当番のモリコネさんへ正さん下山連絡、(林正Pにしては?)あまりの時間の早さに驚き気味で、正さん苦笑い。そのあと蘭は、正さんの愛妻・ミチヨさんとの出発間際の約束?、「今回は早く帰りますので」を実行すべく中央道を愛車・オデッセイで爆走する。

 ■BP5:50=大谷原8:20

(蘭記)

鹿島槍での出会いと刺激

ダイレクト尾根上部の核心部で追い付いてきた後続パーティーにどこの会かと尋ねると、「ぶなの会」という返答。もしかして三浦さんとかいたりするんですか?と聞いてみると、近くの谷にスキーで入っていると言う。この辺りから風雪がひどくなり、当初予定していた鎌尾根の下降は、下降点の特定が困難なため断念。猛烈な吹雪の中、冷池山荘を目指すことにした。山頂直下からの下降では結構必死なルートファインディングを要し、この悪天が楽しい出会いをもたらしてくれることなど、想像すらしていなかった。

ようやく辿り着いた避難小屋で、はからずも三浦大介さん(ぶなの会、スキーアルピニズム研究会)と再会。三浦さんとは、2000年4月の白馬岳主稜、GWの大谷原、そして7月のペルー・ブランカ山群とたて続けに会っていたが、最近では新生「ロック&スノー」や「岳人」で目にする方が多かった。山スキーのエキスパートである氏から紹介されたのが、何と「チーム84」の澤田実さん。海外の高峰だけでなく、冬の黒部や剱の記録も多いことから、以前から力のある人だ思っていたが、まさかその人に会えるとは!ひとしきり黒部横断の話題で盛り上がる。今年は、僕が知っているだけでも3月に4パーティーが黒部横断に成功するなどメモリアルな年となったようだ。サンナビキ同人の黒部別山中尾根本稜、京都の伊藤達夫パーティーの黒部別山大ヘツリ尾根は何れも冬季初登!さらに、わらじの仲間の黒部別山中尾根支稜〜剱岳八ツ峰滝ノ稜。また、めっこ山岳会の佐藤裕介君は何と単独で丸山東壁から立山を縦走して八ツ峰へとつなげている。澤田さんは、初登の2本については「大物を全部やられてしまった」と笑いながら悔しがっていた。佐藤君のことを話すと、驚きと共にその風変わりなコースに「渋いねー!」と感心していた。

年末やGWの入山時に信濃大町の駅や、扇沢の駅で偶然知り合いの山ヤに会うのも楽しいが、こうやって山の中で会うのもまた格別の楽しさがあり、大いに刺激を受ける。また、エキスパートや地元の山ヤは、その山が最も輝く季節の中で我々クライマーを優しく受け入れてくれる時期を知っており、そういう人達と同じ時間と空間を共有できることを幸せに感じる。

翌朝、僕達2人がまだ小屋の中でゴソゴソしている内に、彼らスキー・パーティーは地吹雪の中、黒部方面へ滑り込むべく鹿島槍を目指して登高していった。(林正規 記)


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