「春剱へのステップ」バリエーションからの立山縦走、そして剱東面を望む

春合宿の事前山行第二弾として、剱を間近に望める立山東面のバリエーションからの縦走を計画。春合宿のパートナー不足を心配してくれた「Wの仲間」M内代表から「Tの風」K原女史を紹介していただき、練りに練った事前山行だったが、直前に先方の会で承認不可となってしまい、2週続けて岡崎君と2人の山行となった。前夜着の「特急あずさ」に合わせる必要も無くなり、早朝土岐IC集合で扇沢へ向かう。
7時過ぎに扇沢に到着したが、切符売場の順番待ちで朝一番のトロリーには乗れず、8時の便で出発。時間を稼ぐために、ケーブルカーに乗り継いで黒部平へ。ロープウェー待ちの乗客と共に外に出て、身支度を整えていると、バックカントリーのお姐が「どこ登るんですか?使い込まれた道具が格好いいですね」と声を掛けてきた。「いやいや」と否定しながらも、「見る目があるな・・・」と満更でもない。
スキーヤーやボーダーが軽装で滑り出す中、重荷の2人は東尾根を登り始める。ここから登る登山者は我々のみ。東尾根には数週間前とおぼしきワカンのトレースが残っており、気持ちのいい雪尾根を登高していく。2420m付近の小ピークに出た辺りで、目指す東面第三尾根を望むが、迫力ある末端壁の前にあっさり転進を決める。隣りの第四尾根か第二尾根か迷ったが、稜線へ早く抜けられそうな第二尾根を選択。結局、以前7月に継続した御前谷〜第二尾根と同じパターンになってしまった。東尾根の北面をトラバースしてサル又のカールへ。第二尾根末端を目指す間、稜線から滑りこんでくるスキーヤーが何とも気持ちよさげだ。尾根末端でハーネスを着けて、尾根北面の雪壁状ルンゼを登高し、略奪点を越えて南面の雪壁へ。再びリッジに戻ろうと急雪壁を登高していると、前触れも無く「ドォン!」という重低音が響いた。今張り付いている雪壁内部に亀裂が走ったようだ・・・これ以上の登高はヤバい。ソロリソロリと撫でるようにトレースを下り、安定した雪面を第一尾根方面へ左上して稜線へ抜ける。第二尾根を登った実感はまるで無いが、致し方あるまい。
立山の稜線は烈風が吹き荒れ、休む余裕も無く北へ縦走。1時間強の稜線歩きを経てようやく真砂岳に到着。真砂尾根をしばらく下ったところに半ば雪に埋もれた内蔵助山荘があり、小屋脇の舟窪状にテントを設営。夜間も風が強く、広い3人用テントで寒い夜を過ごす。

この日は剱を間近に望みながらの尾根下降。尾根上半部は露岩の多いリッジを避けての北面の長いトラバースに気が抜けないが、剱東面の源次郎や八ッ峰を間近に拝めるスッキリとした素晴らしい尾根だ。2291m標高点からは安全圏かと思いきや、内蔵助平への支稜に入り、腐り始めた雪でワカンに履き替えた後、垂直の藪壁下降や、急雪壁の下降を強いられ、意外に苦労させられる。2060m付近のコルから大きなルンゼを下って内蔵助平へ。大休止の後、黒部川方面へは意外にもトレースが無く、時折夏道を見つけながら下っていく。雪割れした内蔵助谷で「黒部の美味しい水」をガブ飲みして元気を取り戻し、ようやく黒部川本流に辿り着いた。
ダム目指して右岸の雪面を歩き始めると、後ろからサングラスの単独スキーヤーが追い着いてきた。挨拶を交わすと、見覚えのある顔に「Y原さん?」と尋ねると、はたして元「Wの仲間」チーフリーダーのY原氏(今はS胡桃)であった。日帰りで真砂谷を滑ってきたが、内蔵助谷でスキーを折ってしまったという。これはラッキー!と「ブヒ、ブヒブヒ(ラッセルお願いしまーす)」と繰り返すと、「ヒヒッ、ヒッヒヒーン!(年寄りをこき使っちゃ駄目だって)」といういななきを残しながら、一陣の風となって我々の視界から消えてしまった。こちらはフキノトウを採りつつ、黒部ダムへ。トレースのお陰で最後の大登りもかなり楽させてもらった。
トロリーで扇沢へ下ると、行きに会ったお姐と再会した。同じ時刻のトロリーに乗っていたというが、この人込みの中、よく僕らが判ったものだ。僕が日焼け対策で首に巻いていた若草色のストールか、岡崎の超イケてるファッションの何れかが目印になったと推測するが、どちらだろうか?