不安定な天気に、直前まで右往左往したが、山は大した降りはなかったとの事で予定通り決行した夏合宿。

朝日と一緒に起床した。5時半に登山道を聖平小屋へ向け歩き出す。6時間半かけて登った。時間は12時半過ぎ。この時間なのにもう睡魔が私を包み始めている。 昼寝をしながら先行隊の三人を待った。15時45分、先行赤石沢隊の金子さん鈴木さん伊藤さんと無事合流する事が出来た。
朝5時過ぎに、四人ほぼ同時に起床。この日は前聖ノ滝沢をやる。前日までの赤石沢で膝を傷めてしまった伊藤さんと、心が満タンな鈴木さんを残し金子隊長と二人で挑む。6時半、気合いを入れて幕場を出発。登山道を滝見台方面へ歩き、ガレ沢を聖沢本沢へ下降する。が、下降する沢を間違えて聖沢のゴルジュの上流に出てしまった。仕方なく登り返して登山道を下流方向へ。少し歩いた所にまたガレ沢があった。下降する。だが、降り立った場所は先程の場所のすぐ隣。まだゴルジュの上である。またしても間違えてしまった。再び登り返した。時間は8時近かった。集中力が切れてしまった私は、金子さんに「時間も時間ですので、もうやめときましょう」と提案。金子さんは「アプローチだけでも確かめておきたい」。この言葉を聞いた私は、金子さんが完全にスイッチON状態である事を察した。この一言で私はふんどしを締め直した。三つ目のガレ沢。今度は間違えなかった。本沢に降り立つと前聖ノ滝沢の出合いの滝が見える。

近づくと予想通りの迫力。だが、事前に見た写真とは随分感じが違う。以外に傾斜が緩やかだ。二人、タバコを一服しいざ登攀開始。出合いの滝30メートルは、中間部まではノーザイル。その上は、ぬめっている事もあり、ロープを出した。この滝を登る自分を夢にまで見てきた私に、金子さんはリードを許してくれた。落ち口には残置ハーケンが一本あった。それにセルフを取り、近くにあったクラックにカムを一つ決め、金子さんをビレイ。さて、次が問題だった。直角に左に曲がった沢筋に8メートルほどのヒョングリ滝。完全なシャワーだ。自信無い的なリアクションの私に金子さんは「つるべでイコー」。シャワークライムする金子さんを見て、更に不安になってきた。実際に自分の番になり、水流の中に突っ込むと、やはり呼吸が出来ない。目もあけられない。ホールドやスタンスを探る間に溺れそう!「ロープを掴め!」の言葉に助けられた。【総合格闘技】。記録を書く度に書く事になりそうだ。

3P目は私のリード。右岸側の尾根状の岩を次の滝の下まで行く。次の滝は20メートル近くの直爆。その前衛の6メートル滝下から巻く。金子さんリードで、左岸側をロープを出したまま岩が土に変わる所まで上がり、ロープを片付け更に巻き上がる。結局この後、ロープを出す事はなかった。20メートル直爆滝の上の10メートル弱の滝も、まとめて巻いた。沢筋に降りると、冷えた身体を太陽が温めてくれた。日頃の心掛けのおかげかな。開けた沢にフリーで登れる滝、時々小さな巻きを交えた気持ちの良い遡行が続く。下ノ大滝が見えてきたのは10時40分くらい。右岸から巻く。獣道が、まるで造られた巻き道のように付いていた。上ノ大滝が見えたのは下ノ大滝の巻きを開始してから15分強。遠くから見ても素晴らしく美しい。この日この時この場所に来られ、この景観を観られた幸せを感じた。思わず【心の汗】が出そうになる。直下まで来ると、また違った表情を見せる上ノ大滝。すぐに離れるのが惜しく大休止する。12時過ぎまでマイナスイオンを身体に蓄えた後、腰を上げる。右岸から巻き始め、上部は水線のすぐ横を快適に登った。しばらく行くと水が枯れ、ガレになった。詰めはまるで朝日の沢のよう(金子さん談)で、まるで天国。はい松帯では雷鳥も姿を見せ、アガッた気分を助長させてくれた。13時34分、奥聖岳と前聖岳の間のコルに到着。先に到着していた金子さんと成功の握手を交わした。人生においと、忘れる事の出来ない瞬間となった。

私にとって初の3000メートル峰の山頂と、取り留めの無い会話を楽しんだ後、1時間半ほどのペースで聖平小屋まで降り、心配しているであろう鈴木さんと伊藤さんの待つ幕場へ急いだ。